2024 年 27 巻 1 号 p. 40-49
【問題と目的】過剰適応は,これまで不登校の一型として問題視されてきた。筆者は,従来の過剰適応で想定されていた自己抑制的な特徴を含まない新たな過剰適応(責任感型過剰適応)を定義している。従来の過剰適応の研究では,2つの自尊感情(随伴性自尊感情・本来感)のズレによる内的不適応が考察されてきた。本研究では,責任感型過剰適応に関して,従来同様2つの自尊感情のズレが見られるかどうか検討することを目的とする。
【方法】10代後半から20代の男女を対象にweb調査を行い,139名(M=24.96歳,SD=3.16)の回答を分析した。
【結果】各尺度の関連性について,責任感型過剰適応の全因子と自己価値の随伴性(随伴性自尊感情)では強い正の相関を示した。その一方で,責任感型過剰適応の外的適応行動に関する2因子と本来感では無相間を示し,過剰適応弊害と本来感では中程度の負の相関を示した。また,責任感型過剰適応尺度によるクラスター分析で得られた責任感型過剰適応群において,他の群よりも随伴性自尊感情が高く,本来感が低いことが示された。
【考察】本研究の結果から,自己抑制の側面を含む従来の過剰適応同様,責任感型過剰適応でも2つの自尊感情のズレが生じていると考えられる。また,外的適応行動の側面は高いものの過剰適応弊害の低い適応群と責任感型過剰適応群を比較すると,随伴性自尊感情については同程度であったにもかかわらず,本来感では責任感型過剰適応群の方が低かった。つまり,外的適応行動そのものが本来感を低めているわけではなく,何らかの弊害が生じていることが本来感を低める原因となっているかもしれない。さらに言えば,責任感型過剰適応において,適応群と同程度に随伴性自尊感情を感じられていることは,本来感の低下を潜在化させる要因の1つとなっている可能性があると考えられる。