抄録
日本の大学入試を取り巻く環境は、今、急激に変化しつつある。平成4年度の約205万人をピークとする18歳人口は、平成21年度には約120万人にまで減少する。大学進学率は上昇が予想されるものの、平成12年度からは、多くの大学に認められていた臨時定員増の最低半数が段階的に解消されて行く。いずれ、全志願者に対する入学者の割合である収容力は100%になると言われ、各大学では、定員確保と進学率上昇にともなう学生の質的変化にも対応するため、多様な入試制度を導入するようになった。一方、各大学の入試判定では、多くの場合、歩留率(入学者数/合格者数)に関する時系列分析に基づく予測を行い, これを根拠に合格ボーダーラインを決定するという方法が採られているようだ。しかし、この方法には、明らかな欠陥がある。つまり、「歩留率」という結果を集約した変量にのみ注目した時系列分析は、予測力の点で根拠に乏しく、特に今日のような環境変化が激しいときは、大きな誤差を生ずる危険性が高い。実際、入学者数の大幅な見込み違いを起こしているケースも、少なからず見受けられる。本報告では、年次経過に比較的安定な構造、つまり因果的表現に基づく予測モデルの提案を試みる。簡素な定式化のなかに、受験生1人1人の入学するか否かのベルヌイ試行に注目するミクロ的視点と、結果としての歩留率の年次変化を説明するマクロ的視点を含み、それら両方向からの接近を矛盾なく接合するモデルであることが示される。