本研究では, 贈与交換と呼ばれる問題状況を扱うRuffleの提案したGift giving model[8]の枠組みに注目し, 拡張モデルの構築と分析をおこなう. Ruffleのモデルは, Psychological gamesの枠組みに基づいており, 意思決定主体に発生する感情が扱われるという点が特徴である. 第一に, receiverの行動を考慮してモデルを構築し, 均衡条件の分析をおこなう. 分析により, giverがギフトを贈るとき, receiverは常にそれを受け取るという結果を得る. 次に, プレイヤーのタイプを導入してモデルを再構築し, 同様の分析をおこなう. そうすると, receiverは贈られたギフトを受け取らない可能性もある, という結果を得る. 第二にreceiverが返礼をするケース, すなわちgiverとreceiverが交代する第2期にまでモデルを拡張し, 分析をおこなう. その際, 交換の「公正さ」を考慮した経済公正関数を導入し, プレイヤーの効用関数に反映させる. その結果, 選択肢のいくつかを省略してゲームを単純にできることが明らかになる. 最後に, 「公正さ」についてさらに考察を進め, 一般公正関数を定式化する. さらにそれをn期まで拡張する場合について考察し, n期gift givingにおけるプレイヤーの一般効用関数の定式化をおこなう.
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