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本発表は、企業のパートナー関係構造が競争優位にどう貢献するかを研究する上で、取引ネットワークへの構造的埋め込みの視点を導入することの有効性を主張する。研究は事例分析で行い、対象にはパートナーとの関係がビジネス上重要な意味をもつERPパッケージベンダーを選択した。分析の結果、オープンな関係構造をもつERPベンダーのパートナー関係は、クローズな関係構造を持つERPベンダーのパートナー関係に比較して、保有資源の観点からは差別化優位性の点で比較優位性をもたないが、取引ネットワークの観点からは機会優位性の点で比較優位性をもつという分析結果を得た。すなわち、伝統的な資源ベース戦略論では明らかにされてこなかった、パートナー関係にもとづくビジネス機会をより多くとらえる能力である機会優位性についてのERPベンダー間の違いが、取引ネットワークへの構造的埋め込み理論に立脚した分析を行うことにより明らかにした。