抄録
近年,大きな社会問題になっているのが「ブラック企業」問題である。ブラック企業と呼ばれる企業では,正社員に異常な長時間労働と残業代の未払いを受け入れさせ,他方で,社員を自発的な退職へと追い込むような戦略的なパワーハラスメントが行われている。
ブラック企業に特徴的なことが「家族」というレトリックである。古来,日本企業には「家の論理」があり,家族は滅私奉公を行い,家の繁栄を目指してきた。ここにはブラック企業との類似性をみることができるが,ブラック企業には「温情」や「庇護」といった家長が子に対して果たすべき実践が欠如している。つまり,日本的経営の「家の論理」を歪な形で継承したのが現在のブラック企業の実態なのである。