抄録
本研究では,1・2 歳児の発達的特徴への保育者のかかわりに注目し,保育所における1・2 歳児の
排泄場面の保育者のかかわりの中で,発達的特徴のある子どもの姿に対し,保育者の迷いや困りがど
のようなときに生じ,どのように解決しているのか,という実態を明らかにすることを目的とする.今回は,1 歳後半児のオムツ交換を嫌がる場面にかかわる保育者の2 つの事例を通して検討していく. その結果,保育者の迷いや困りは,「保育の意図を持つ保育者が子どもの主体性を尊重することで生じた迷いや困り」「担任保育者として役割を果たそうとする中で生じる迷いや困り」が見いだされ,保育者が今ある子どもの育ちを信じ,これからの子どもの育ちを願い,保育の意図を持つ主体としてかかわろうとするからこそ生じるものであった.保育者の迷いや困りの解決の過程は,「保育者同士の同僚性が発揮された連携による解決の過程」「1 人の子どものかかわりとほかの子どものかかわりの双方を迫られた中で,優先するかかわりを選択する解決の過程」が見いだされ,保育の意図を持つ主体としての保育者が子どもの主体性を尊重し,「子どもが自ら納得して行動する」ことを軸にして,今ある思いに丁寧に向き合いかかわることが最重要と考える.