抄録
過去の炭焼きが山岳地域の植生景観に与えた影響について考察するため,東北地方中部の船形火山群に位置する泉ヶ岳(1172m)周辺において,炭窯跡の分布と特徴,炭窯跡周辺の高木・亜高木に関する調査,文献や植生図などの既存知見との照らし合わせを行った.その結果,炭窯跡は主に明治~昭和初期に使用されたものであること,その時期の伐採は標高800m付近まで及んだことがわかった.当時,伐採を受けたとみられる範囲には,現在,代償植生や植林地が分布しており,炭焼きのための伐採が,こうした植生景観の成立に深く関わっていたことが推定される.また炭窯跡近傍に生育する高木・亜高木の種組成や胸高直径・胸高断面積の特徴は,場所ごとの伐採の様態に応じた,その後の二次遷移の過程を反映している.日本における過去100年前後の木炭生産の推移を考えると,山地帯以下の植生景観に,過去の炭焼き目的の伐採が影響を与えていた山岳地域は,少なくないものと考えられる.