2021 年 21 巻 01 号 p. 95-110
小学校6 年生の外国語科におけるつまずきの多様な実態を明らかにするとともに,指導者がそうしたつまずきに対してどの程度認知しているかを把握し,児童のつまずきへの指導法の手がかりを探索的に見出すことを目的とした。公立小学校984 校を対象に,外国語科を指導する学級担任と外国語専科教員に対する質問紙調査を行ったところ,学級担任235 名と専科教員60 名の計295 名から有効回答を得た。分析の結果,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」,「書くこと」の4 技能の他,母語に関連したつまずきや特別な教育的配慮に関する「複合的要因」について,比較的多くの児童に共通して認められるつまずきから,個別性の高いつまずきまで,網羅的に把握することができた。また,児童の多様なつまずきに対する学級担任と専科教員による認知率の差には統計的有意差はないものの,前述の4 技能及び「複合的要因」の計5 領域間における児童のつまずきの実態に対する学級担任,専科教員それぞれの認知率において,学級担任の場合,これら4 技能に対するつまずき認知率が「複合的要因」に対するものよりも有意に高かったのに対し,専科教員の場合は,「書くこと」に対するつまずき認知率のみが「複合的要因」よりも有意に高かった。これらの結果から,学級担任と専科教員では児童が示す困難に対する異なる着眼点や見取り方があることが推測され,異なる専門性を持つ両者の視点を相補的に生かした支援の在り方を検討していくことの必要性が示唆された。