2023 年 35 巻 1 号 p. 9-15
様々な藻類やツノゴケの葉緑体中にみられるピレノイドは,主にRubisCOからなるサブオルガネラである.ピレノイドは効率的な光合成を可能とするCO2 濃縮機構に寄与するが,藻類の様々な系統や陸上植物の起源において独立に失われた.近年,緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)において,ピレノイドの形成にRubisCO小サブユニット(RBCS)表面の2つのヘリックスの疎水度が重要であることが示唆された.さらに,RubisCOの凝集を仲介するEPYC1など,ピレノイドの形成に重要な分子が次々と報告された.しかしながら,ピレノイドの形成や進化的消失の分子基盤の詳細は依然として不明な点が多い.本稿では,ピレノイドの進化を研究するモデル系統となる可能性を秘めたクロロモナス系統群について紹介する.クロロモナス系統群はクラミドモナスと同じ緑藻綱ボルボックス目に所属するが,ピレノイドをもつ種ともたない種からなるレティキュラータグループや,クラミドモナスとは異なりデンプン鞘を伴わないピレノイドを複数もつグロエオモナス属など,ピレノイドの形質が異なる様々な属/クレードが含まれる.また,最近筆者らが実施した,レティキュラータグループ内のピレノイドをもつ3種とピレノイドを欠く2種のRBCS配列の比較解析についても紹介する.