抄録
群馬県にある吾妻川水系源流域には4つの山体があり,それらの火山活動の年代は異なる.そのため,河川水や地下水の水質は,火山活動の年代の違いによる岩石の風化度を反映していると考えられる.これまで,河川水を多地点で採取し,同一水系内の山体間で水質を比較した研究例は少ない.そこで本研究では,吾妻川水系の4つの山体の源流域の河川水と地下水の化学的性質から吾妻川水系源流域の水質形成機構を明らかにすることを目的とした.調査は,2021年11月から2024年6月にかけて行い,河川水および地下水を97地点で採取した.採取した試料は,pH,電気伝導度,主要イオン濃度,SiO2濃度,酸素・水素安定同位体比を測定した.吾妻川水系源流域では,岩石の風化が水質を決定する大きな要素であると示唆され,河川水や地下水の水質は,4つの山体で異なっていた.陰イオンに占めるHCO3-の割合は,山体の火山活動の年代順に大きくなっており,岩石の風化度の違いが,河川水や地下水の水質に反映されていた.四阿山の河川水の水質は,流域内に分布する岩石の,風化後の透水性および溶出成分の溶け易さを反映する結果となった.