統合失調症患者の体力は低いと言われているが本当に低いのだろうか、また、それはどのくらい低いのか、それらを明確にした報告は今のところない。統合失調症患者の体力に関する先行研究は散見されるが、施設間で測定種目や方法が異なったり、一度きりの実施やデータ数の少ないこともあり一般化できていない現状がある。これらの課題を解決するため、福岡大学病院精神神経科デイケアでは、活動の中に新体力テスト6種目(握力、上体起こし、長座位前屈、反復横とび、立ち幅跳び、20 mシャトルラン)を10年間、同一手法により継続的に実施した84例の後ろ向き調査を行った。その結果、当院デイケアに通う統合失調症患者の体力は一般の全国平均より全般的に低く、特に下半身の力を使った種目で低いことが明らかになった。しかし本研究の限界として、単一施設での調査のためデータ数が少なく一般化できるまでには至らなかった。そこで、今回の測定結果及び10年目のアンケート調査から体力測定実施の意義を導き、今後体力測定を有効活用するための一考察を行った。