スポーツ精神医学
Online ISSN : 2436-1135
Print ISSN : 1349-4929
13 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 鎗田 英樹
    2016 年 13 巻 p. 9-15
    発行日: 2016/08/22
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    身体障がい者スポーツの重要性は広く認知されており、競技分野も確立していると言える。しかし精神障がい者の競技スポーツは未確立であり、当事者の権利や意義の面からも実施・普及は不十分である。そのため、精神障がい者の競技スポーツの現状や課題を整理することを目的に、文献研究を行った。精神障がい者の競技スポーツは着実に広がりを見せており、有益な活動のひとつとなっている。またその効果についても、多数の報告がなされている。しかし、その運営基盤は不十分であり、早急な整備が必要である。また当事者対象のニーズ調査が少ないため、更なるニーズ調査の実施が望まれる。現在、国際化への取り組みが活発となっているが、国内での実施・普及が不十分である。そのため当事者選手、支援者双方にとって望まれる競技性スポーツの在り方を明らかにし、実施・普及を推進するモデルを作ることが必要と考える。

資料
  • 上野 雄己, 平野 真理
    2016 年 13 巻 p. 16-28
    発行日: 2016/08/22
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、大学生運動部員の心理的敏感さとバーンアウト傾向の関係における効果的なレジリエンスを明らかにすることを目的とした。調査対象者は、大学の体育会運動部に所属する学生188名(男性33名、女性155名、平均年齢19.7歳、SD=1.2)であり、質問紙を用いた調査を行った。まず、心理的敏感さがバーンアウトを予測し、また運動部員のレジリエンスは心理的敏感さに関連するレジリエンス(「競技的精神力」「競技的身体力」)と関連しないレジリエンス(「競技的意欲・挑戦」「競技的自己理解」)の2つに分類された。次に、二要因分散分析を行った結果、心理的敏感さが高くても、心理的敏感さに関連しないレジリエンスが高いことでバーンアウト傾向の得点が低下する緩衝効果が示された。以上のことから、心理的敏感さが高い大学生運動部員に対して、心理的敏感さに関連しないレジリエンス要因を高めていくことでバーンアウト傾向を抑制できることが示唆された。

  • 宮崎 伸一
    2016 年 13 巻 p. 29-33
    発行日: 2016/08/22
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2000年のシドニーパラリンピックで、知的障がいクラスで金メダルを取ったスペインバスケットボールチームに多くの知的障がい者ではない選手がいたことが明らかになった。IPC(国際パラリンピック委員会)は、公式な知的障がい者クラスはパラリンピックに設けないこととし、その一方でINAS(国際知的障害者スポーツ連盟)とIPCは、合同で知的障がいクラスの新しい参加資格を作るための作業に入った。このプロジェクトは、すべての知的障がいを持つ競技者の一般的な資格を作るとともに、各スポーツ独自の資格を作ることを目指した。IPC主催の試合に参加するには、初めに医学専門家が作成した証明書をINAS国際資格委員会に提出して審査を受け、その次に、試合会場で各スポーツの国際競技団体から指定されたクラス分け委員による検査を受けることになる。試合会場でのテストでは、知的障がいが各スポーツの競技技能に影響を与えているという「sports intelligence」が評価の中心となる。これらの結果、2012年のロンドンパラリンピックで、陸上、水泳、卓球の各競技に知的障がいクラスが復活した。このような手続きは厳密さを確保するものの、書類作成や審査にかかわる専門家たちに多くの負担を課しているが、我々関係者は知的障がい者の競技性の高いスポーツへの参加機会を維持するために努力していかなければならない。

原著
  • 宮内 雅利, 岸田 郁子, 須田 顕, 石井 千恵, 茅沼 弓子, 遠藤 詩郎, 石井 紀夫, 平安 良雄
    2016 年 13 巻 p. 34-38
    発行日: 2016/08/22
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    緒言:統合失調症患者において、抗精神病薬は運動に影響を及ぼすと言われている。方法:清心会藤沢病院に通院中の統合失調症患者16名(平均年齢48.0±12.6歳)を対象に、身体活動量計を用い1日身体活動量を測定、数値化し、1日の抗精神病薬投与量(クロルプロマジン換算)0~1000 mgの低用量群(LCPe)と、1000 mgを超える高用量群(HCPe)に分け、2群間の身体活動量(総エクササイズ(EX)、運動EX、生活活動EX)を比較した。結果:総EX(LCPe:4.47±2.01 EX、HCPe:2.10±1.48 EX)、運動EX(LCPe:3.61±1.99 EX、HCPe:1.63±1.28 EX)において2群間に有意差がみられた。考察:抗精神病薬の多剤高用量は、身体活動量特に運動量を低下させる可能性が示唆された。今後は精神症状や生活背景含め運動に影響を及ぼす因子を考慮し包括的な調査をすすめていく。

  • —福岡大学病院デイケア体力測定10年間を通して—
    横山 浩之, 田中 謙太郎, 永井 宏, 富永 信平, 西村 良二
    2016 年 13 巻 p. 39-47
    発行日: 2016/08/22
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    統合失調症患者の体力は低いと言われているが本当に低いのだろうか、また、それはどのくらい低いのか、それらを明確にした報告は今のところない。統合失調症患者の体力に関する先行研究は散見されるが、施設間で測定種目や方法が異なったり、一度きりの実施やデータ数の少ないこともあり一般化できていない現状がある。これらの課題を解決するため、福岡大学病院精神神経科デイケアでは、活動の中に新体力テスト6種目(握力、上体起こし、長座位前屈、反復横とび、立ち幅跳び、20 mシャトルラン)を10年間、同一手法により継続的に実施した84例の後ろ向き調査を行った。その結果、当院デイケアに通う統合失調症患者の体力は一般の全国平均より全般的に低く、特に下半身の力を使った種目で低いことが明らかになった。しかし本研究の限界として、単一施設での調査のためデータ数が少なく一般化できるまでには至らなかった。そこで、今回の測定結果及び10年目のアンケート調査から体力測定実施の意義を導き、今後体力測定を有効活用するための一考察を行った。

feedback
Top