2012 年 9 巻 p. 38-43
加齢とともに睡眠に関する訴えは多くなる。また、睡眠は気分と関連性があり、睡眠改善はメンタルヘルスの向上に貢献すると考えられている。睡眠を改善する因子に運動が挙げられるが、どのような運動をどの程度行わせると睡眠や気分が改善するのかは明らかになっていない。そこで我々は、ケアハウスに入所している高齢者に対し1ヶ月間の運動プログラムを行い睡眠及び気分に及ぼす影響を検討した。方法は質問紙による睡眠時間の調査、老年期うつ病評価尺度(GDS)による気分の調査、筋力評価としてTimed Up & Go Test、開眼片足立ち、上体起こしを実施した。運動は自重負荷筋力トレーニングを週2回夕方に行った。その結果、早朝の時間帯(6:30~6:45)における覚醒の割合が有意に増加した。また、GDSスコア及び腹部筋力の有意な向上が見られた。以上より、1ヶ月という短期間の運動プログラムにおいても高齢者の身体的健康に加え、睡眠及び気分は改善される可能性が示された。