2012 年 9 巻 p. 44-53
入院医療から地域保健医療へと移行したイタリアの精神保健制度の歴史において、精神障害者のサッカー支援は地域生活を始めた人々の社会権利として発展してきた。世界に先駆け、1990年代より精神障害者が出場する全国大会が開催されている。精神障害者スポーツの世界的発展に貢献すべく、こうしたイタリアのサッカー支援がどのようにして実現されたのかを明らかにするため、サッカー支援の法的根拠、地域精神保健医療の仕組みを概観し、またサッカー支援において中心的に関わっている2人の医師に聞き取り調査を行った。その結果、サッカー支援の法的根拠は1978年のバザーリア法にあり、また精神保健政策の中でサッカー支援が体系化されていることがわかった。さらに、日本の大会形式に近いUISP(Unione Italiana Sport Per Tutti)が主管する精神障害者を中心とした大会と、ANPIS(Associazione Nazionale Polisportive per l’Integrazione Sociale)が主管する地域の人々と共にサッカーを楽しむ大会の2種類が開催されていたことが明らかとなった。