抄録
本試験は、個体群の品種や栽植密度等の条件を同一にしたとき、肥料等の資源が集中分布することで個体群の一部に資源の過不足を生じ、個体群の収量が低下するとの仮定のもとに実施した。まず、肥料を列状に集中的に施用することにより、個体群の穂数や地上乾物重、収量が不均一になることを確認し、このときの個体群の不均一の程度を分散で表した。その結果、個体群の分散の大きさは肥料を集中的に施用した位置の個体の生育に左右されていることが認められた。また、個体群の収量と分散との間には、1991年のデータでは不明瞭であるがやや負、1992年のデータではやや正の関係が認められた。この結果、個体群を不均一に生育させたことによる収量と分散との間の定量的な関係は見いだすことができなかった。分散の大きい個体群で収量が高くなった要因の1つは、肥料を列状に集中的に施用したことで稈の強度の異なる易倒伏性と難倒伏性の個体が混在し、個体群全体として倒伏が発生しなかった点(もたれあいの助長効果)を指摘することができる。このような効果が加わった個体群では、収量は単純に個体数に比例した値とならないことが示された。また、この場合の個体群について、気象的生産ポテンシャルが異なるときの収量特性の考察(仮説)を加えた。なお、ここでは個体群のサンプリング法として層化無作為抽出法を用いた。肥料を列状に集中的に施用することで生じた、パターン化した不均一な個体群の代表値を得る方法として妥当であると判断された。