システム農学
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窒素収支より見た中国の食糧生産
川島 博之久保田 宏
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1996 年 12 巻 2 号 p. 118-125

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抄録

中国における食糧供給の余力について検討した。1960年以来、中国の耕地面積はほぼ1億haであるのに対し、人口は6.5億人から12億人へと増加した。1992年における一人当たりの耕地面積は0.08haであり、欧米の水準に比べ少ない。中国の草地面積は4億haあるが、これによる食肉生産は少ない。漁獲高は1992年において1.31x107[ton year-1]、世界第一位であるが、一人当たりの消費量は日本の1/10に過ぎない。現在、単位耕地面積当たりの穀物収穫量は4.3[ton ha-1 year-1]と高水準にあるが、窒素肥料投入量も高く、地下水のNO3-N汚染が懸念される。窒素収支は中国における動物性蛋白質の増産余力が小さいことを示している。今後、経済発展に伴い動物性蛋白質需要の増大が予想されるが、大量の穀物を輸入しない限り、国民に十分な動物性蛋白質を供給することは難しい。

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© 1996 システム農学会
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