システム農学
Online ISSN : 2189-0560
Print ISSN : 0913-7548
ISSN-L : 0913-7548
12 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
投稿論文
  • 大森 宏, 斎尾 乾二郎
    1996 年 12 巻 2 号 p. 103-112
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2024/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    現在、水稲平年収量は、実収量を年次効果と被害率による重回帰式にあてはめた結果をもとに関係方面の専門家の意見を取り入れて決定されている。しかしながら、現行の算定方式にはいくつかの理論上の問題点があるので、実収量と被害量の和で定義される基準収量をベースにすべきだと考える。基準収量は被害がなっかたとしたら得られるはずの収量で、滑らかに変化すると考えられる。しかしながら、実際のデータでは必ずしも滑らかに変化していない。この理由として、何らかの質的な栽培状況の変化により、ある年次を境に基準収量のトレンドが変化したとする仮説H1と、被害程度の推定における何らかの系統的誤差が存在するという仮説H1'を、トレンドは滑らかに変化するという帰無仮説H0に対して設定した。各仮説のもとでif~then~というファジィルールをもつファジィモデルをあてはめた。データに最も適合した仮説(ルール数)はAICで評価した。この手法を全国、北海道、高知の昭和45年から20年次に亘るデータに適用したところ、全国と北海道は2つのファジィルールを持つ仮説H1'が採択され、被害の程度が小さい時と大きい時で異なる基準収量のトレンドが推定された。一方、高知は2つのノンファジィルールをもつ仮説H1が採択され、昭和51年を境に基準収量のトレンドが変化したことが示された。平年収量は、H1が採択されたときには、各ルールのもとでの平均被害量を基準収量トレンドから差し引く算定方式を提唱した。一方、H1'が採択されたときには、被害の程度が大きいときに被害の推定における系統的誤差があると仮定し、基準収量をこの系統的誤差分修正した後のトレンドから、同様に修正した平均被害量を差し引く方式を提唱した。
  • (1)窒素フロー量の推定
    築城 幹典, 原田 靖生
    1996 年 12 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2024/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    家畜排泄物の環境への負荷の大きさを定量的に把握するためには、各畜産農家からどれくらいの家畜排泄物が発生し、それらがどのように利用・廃棄されているかの現状を正確に把握することが必要である。そこで本研究では、農林水産省経済局統計情報部が行っている牛乳生産費調査のデータにもとづいて、酪農経営における物質循環のうちで環境負荷などに最も影響が大きい窒素のフロー量を定量的に推定した。牛乳生産費調査の1985年度と1990年度の調査個票をもとに、酪農経営における窒素フロー量(単位:kgN/戸/年)を推定した。推定した窒素フロー量の項目は、化学肥料中の窒素量、自給および購入飼料中窒素量、牛乳中窒素量、牛体中窒素量、敷料中窒素量、ふん尿中窒素量およびきゅう肥の利用、販売、廃棄への窒素量である。結果は、調査農家別に推定したフロー量を、北海道と都府県について平均値で示した。酪農経営1戸当たりから1年に発生するきゅう肥中窒素量は、北海道では1985年度が3,731kg、1990年度が4,965kgであるのに対し、都府県では1985年度が1,947kg、1990年度が2,445kgであった。自家農耕地1ha当たりへのきゅう肥および化学肥料による窒素投入量は、北海道では1985年度で205kg、1990年度で201kg、都府県では1985年度で501kg、1990年度で525kgと推定された。また、きゅう肥および化学肥料による窒素投入量と自給飼料による窒素の持ち出し量の差は、北海道では1985年度で103kg、1990年度で100kg、都府県では1985年度で316kg、1990年度で354kgの過剰と推定され、都府県での環境に対する潜在的な窒素負荷がかなり高いことが推察された。
  • 川島 博之, 久保田 宏
    1996 年 12 巻 2 号 p. 118-125
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2024/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    中国における食糧供給の余力について検討した。1960年以来、中国の耕地面積はほぼ1億haであるのに対し、人口は6.5億人から12億人へと増加した。1992年における一人当たりの耕地面積は0.08haであり、欧米の水準に比べ少ない。中国の草地面積は4億haあるが、これによる食肉生産は少ない。漁獲高は1992年において1.31x107[ton year-1]、世界第一位であるが、一人当たりの消費量は日本の1/10に過ぎない。現在、単位耕地面積当たりの穀物収穫量は4.3[ton ha-1 year-1]と高水準にあるが、窒素肥料投入量も高く、地下水のNO3-N汚染が懸念される。窒素収支は中国における動物性蛋白質の増産余力が小さいことを示している。今後、経済発展に伴い動物性蛋白質需要の増大が予想されるが、大量の穀物を輸入しない限り、国民に十分な動物性蛋白質を供給することは難しい。
feedback
Top