システム農学
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酪農経営における物質循環の定量的な把握に関する研究
(1)窒素フロー量の推定
築城 幹典原田 靖生
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1996 年 12 巻 2 号 p. 113-117

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抄録

家畜排泄物の環境への負荷の大きさを定量的に把握するためには、各畜産農家からどれくらいの家畜排泄物が発生し、それらがどのように利用・廃棄されているかの現状を正確に把握することが必要である。そこで本研究では、農林水産省経済局統計情報部が行っている牛乳生産費調査のデータにもとづいて、酪農経営における物質循環のうちで環境負荷などに最も影響が大きい窒素のフロー量を定量的に推定した。牛乳生産費調査の1985年度と1990年度の調査個票をもとに、酪農経営における窒素フロー量(単位:kgN/戸/年)を推定した。推定した窒素フロー量の項目は、化学肥料中の窒素量、自給および購入飼料中窒素量、牛乳中窒素量、牛体中窒素量、敷料中窒素量、ふん尿中窒素量およびきゅう肥の利用、販売、廃棄への窒素量である。結果は、調査農家別に推定したフロー量を、北海道と都府県について平均値で示した。酪農経営1戸当たりから1年に発生するきゅう肥中窒素量は、北海道では1985年度が3,731kg、1990年度が4,965kgであるのに対し、都府県では1985年度が1,947kg、1990年度が2,445kgであった。自家農耕地1ha当たりへのきゅう肥および化学肥料による窒素投入量は、北海道では1985年度で205kg、1990年度で201kg、都府県では1985年度で501kg、1990年度で525kgと推定された。また、きゅう肥および化学肥料による窒素投入量と自給飼料による窒素の持ち出し量の差は、北海道では1985年度で103kg、1990年度で100kg、都府県では1985年度で316kg、1990年度で354kgの過剰と推定され、都府県での環境に対する潜在的な窒素負荷がかなり高いことが推察された。

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© 1996 システム農学会
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