抄録
北日本の水田に開放型二酸化炭素濃度増加装置を設置して、通常および二倍の二酸化炭素濃度条件において水稲 (Oryza sativa L. cultivar ‘Akita-Komachi')を実生から収穫まで栽培した。二酸化炭素濃度倍増条件下では、水稲の乾重量が15%増加し(P<0.01)、炭素含有率はほとんど変わらず、窒素含有率はわずかに低下した。水稲の炭素固定量は16%増加したが(P<0.05)、窒素吸収量には有意な差異は認められず、植物体のC/N比は有意に増加した(P<0.05)。植物が吸収した窒素のうち、肥料由来は25-27%であり、肥料窒素の37-39%が水稲に吸収され、29%が土壌に残存し、31-33%は回収されなかった。二酸化炭素増加実験初年度では、土壌窒素・肥料窒素への依存度、肥料窒素の吸収率・残存率には二酸化炭素増加の有意な影響は認められなかった。しかし、炭素固定量が増加すれば土壌への炭素供給も増加し、しかも植物体のC/N比が高まるため、将来的には土壌のC/N比が増加し、水稲と微生物との間で窒素をめぐる競争が強まることで窒素不足が引き起こされ、化学肥料使用量の増加につながることが懸念される。