2000 年 16 巻 2 号 p. 143-155
流域における窒素などの物質の動態を評価する場合、土地を覆う植生の影響は無視できない。しかし山岳森林帯では地形起伏によって生じる影が正確な土地被覆解析を困難にしている。そこで、本研究では、長良川上流の山岳地帯に対し、多時期衛星データのバンド間比演算処理によって影の影響を軽減し、得られた画像と他のバンドから新たな画像を合成する手法を開発した。その結果、森林植生を常緑針葉樹林・常緑広葉樹林・落葉広葉樹林・針広混交林の4種類に、また常緑針葉樹林を林齢別に4段階に分類することができた。さらに、得られた衛星画像の分類結果を衛星データと同年次の各種統計データにより検証し、森林植生全体についておおむね一致していることを証明した。最後に、適用例として20年離れた二時期の土地被覆の変化を検出した上で、土地被覆項目毎の変化傾向について論述した。