抄録
異なる方角(東、南、西、北)を向いた水稲個葉における個葉光合成速度の日変化を測定した。晴天日の個葉光合成の日変化は、葉の向いている方角によって異なっていた。これは、主に葉面での受光量の日変化の違いによるものと考えられた。しかしながら、葉温、蒸散、気孔コンダクタンス等については、葉の向いている方向によって若干の差異は認められるものの、おおむね似かよった日変化を示した。光-光合成曲線についても同様に、葉の向いている方向による顕著な差異は認められなかった。東・西・北向きの葉における日総受光量は、南向きの葉に比べてそれぞれ37%、28%、80%低かった。これに伴い、日総光合成量もそれぞれ20%、3%、36%低い値を示した。一方、日総蒸散量は、いずれの方角を向いた葉においても南向きの葉の±10%の範囲内であった。これらのことから、個体の部分部分によって気孔開度の局所的なバラツキは小さいこと、しかしながら、局所的な葉面光環境の不均一な実態に基づいて個葉光合成の日変化にバラツキが生じていることが明らかになった。