システム農学
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リモートセンシングによるピナツボ火山泥流被害地における植生回復地帯の泥流物質表層水分の評価
吉田 正夫高橋 寛至太田 寛行渡辺 眞紀子稲永 麻子鈴木 創三
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2003 年 19 巻 2 号 p. 130-140

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抄録

ピナツボ火山噴火直後の1992年から1996年にかけて、リモートセンシング技術を用いて火山泥流被害地の拡大と植生回復の追跡調査を行った。ピナツボ火山東側のバンバン川流域では、1991年から1996年にかけて下流域から上流域へと泥流被害地は拡大し、1996年までに約12,000haが泥流の被害を受けた。また、この河川流域では下流域から1993年に植生の回復が見られ、徐々に植生回復地帯が広がっていき、1996年には泥流被害地の約6,200haにおいて植生が回復した。バンバン川流域における現地調査で、泥流物質表層の分光反射率とその水分含量を測定した結果、1,550-1,750nmの波長帯(Landsat TM バンド5の波長帯に相当)の分光反射率と水分含量との間に高い相関関係がみられた。1992年のラハール地帯において、Landsat TM バンド5デジタル値が87から103の範囲は、翌年(1993)植生が回復するための最適な水分状態を示していたと推察できる。また、1995年から1996年では、バンド5デジタル値が92から110の範囲で示された水分状態であった。バンバン川流域において、下流域から植生が回復してきた。この下流域では細粒径のラハール物質の堆積が顕著であった。Landsat TM バンド5は、ピナツボ火山被害地での植生回復と泥流物質表面水分量との関係を推定するのに有効であった。

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