システム農学
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ブドウ園生態系における土壌炭素の貯留
関川 清広木部 剛小泉 博鞠子 茂
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2003 年 19 巻 2 号 p. 141-150

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抄録
果樹園の土壌炭素収支を明らかにすることを目的として、甲府盆地北東部(山梨市)に位置する山梨県果樹試験場旧圃場のブドウ園において、1998年9月から2000年12月まで研究を行い、特に土壌炭素貯留についてモモ園との比較を行った。土壌からの炭素放出として通気式‐IRGA法によって土壌呼吸速度を測定し、土壌呼吸速度と地温との関係に基づいて年間の土壌呼吸量を求めた。土壌への炭素供給として、果樹と下層植生由来のリター供給量、施肥量などを調査、測定し、一部については推定を試みた。土壌呼吸による炭素放出量は422.7 g C m-2 y-1、そのうち従属栄養微生物による呼吸量は222.5 g C m-2 y-1と推定された。土壌への炭素供給量は401.0 g C m-2 y-1で、そのうちブドウ由来が34 %、下層植生由来が54.5 %、施肥などによるものが11.5 %であった。これらの放出量はモモ園のおよそ半分、供給量はモモ園の場合の1/3程度であった。土壌炭素収支は178.5 g C m-2 y-1と正の値を示し、モモ園生態系と同様に、ブドウ園生態系の土壌も炭素のシンクであることが明らかとなった。下層植生(栽培対象以外の植物)による炭素供給の割合が著しく大きい点も、モモ園生態系と同様であった。下層植生由来の炭素供給量が多い場合、果樹園生態系の土壌は炭素を年々貯留し続ける傾向にあると結論される。しかし、ブドウのように棚仕立ての場合、立木仕立てのモモ園より土壌炭素の年間貯留量は少なかった。これは、棚仕立て果樹園では林冠がうっ閉し、葉群下に到達する光強度が弱いことにより、立木仕立て果樹園に比べ下層植生の生産量が少ないためである。したがって、果樹園生態系における土壌炭素の年間貯留量は、果樹の仕立て方によって影響を受けることが明らかになった。
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