システム農学
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研究論文
東北タイにおける乾季の非灌漑水田への供給可能水量の推定に関する考察
宗村 広昭吉田 貢士樋口 克宏戸田 修丹治 肇
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2005 年 21 巻 3 号 p. 167-176

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抄録

乾季の水田において水稲栽培に使用した水量と乾季の降水量との差を数年間推定し、その値から各県における水田への供給可能水量の推定を試みた。対象地域には乾季において灌漑水田と非灌漑水田とに区別された米生産量データが存在する東北タイを選定した。アジアモンスーン地帯では季節が雨季と乾季に明瞭に分かれ、年降水量の約7割が雨季に集中するため、乾季に直接水田へ入る降水量だけを使用して作付けを行うことは不可能である。つまり、乾季に水稲を栽培する場合にはどこからか水を供給する必要がある。灌漑水田ではダム貯水池から水が供給され、非灌漑水田では水田群に隣在する小溜池や水路の溜まり水から水が供給される。数年間における水田への供給水量および県毎の供給可能水量を推定するにあたり、米生産量データ、単位収量あたりの必要水量および乾季の降水量を用いた。非灌漑水田の水源と考えられる小溜池の規模や水路の溜まり水のデータを広域で把握することは不可能なので、最初に灌漑水田の米生産量データを用いて推定された供給可能水量と王立灌漑局の大・中規模貯水池データから算出した供給可能水量との比較を行い、灌漑水田の米生産量データから推定した値の妥当性を検討した。その結果、灌漑水田の収穫面積の集計値が小さい県において両者の供給可能水量の差が1 mm 以下となる傾向が見られた。乾季の灌漑水田において集計された収穫面積が小さい県は、農業統計上で灌漑水田と区分されてはいても、水利用の実態は非灌漑水田のように自由に水田へ水を供給できない状況にあると考えられるので、同様の計算方法で非灌漑水田についても推定できると推察された。その結果、東北タイの中ではチー川が流下する県とムン川上流の県において供給可能水量が高い傾向にあった。

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