抄録
水稲生産調整に係る圃場作付状況の現地確認作業は、梅雨時の高温多湿で気象環境条件が厳しい中で、非常に多くの圃場を短期間に一斉に歩いて見回るという対応が多くの自治体でなされている。また、確認作業の実施にあたっては、対象圃場の多さから、地区の代表者等を案内役として同行する対応も見られる。しかし、現場では確認作業のための人員の確保が年々困難となっており、省力かつ効率的な確認方法が求められている。そこで、農地管理等に導入が進んでいるGIS でのデータ整備を前提に、屋外での利用に適したペン操作が可能なタブレットPC やPDA で動作するモバイルGIS をベースとして、確認作業を効率的に実施する圃場作付状況確認システムを開発した。本システムでは、対象圃場を確実かつ迅速に特定するために、GPS とともに現行の確認作業の際に農家により設置されている生産調整確認票を使用する。この確認票の様式を変更し、遠方から視認可能な識別記号の表示に特化させることにより、基本的に車で移動し、車内から確認作業を実施することができる。本システムを用いた現地試験の結果では、対象圃場が分散して確認作業の能率が低下するような条件においても運転手とシステムのオペレータの2 人1 組で1 時間あたり約80 筆の確認作業が可能であった。作業能率は、同ルートを歩いて確認作業を実施したと仮定した場合の約3 倍と効率的である。また、車外に出て確認する必要があった圃場は約1 割で、確認作業の大部分を車内で行えることから、作業時の環境改善、軽労働化が図れることが確認できた。