システム農学
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研究論文
福島原発事故に起因した水戸市の大気中放射線量の予測
山口 文夫塩見 正衞竹内 孝白岩 昭年石田 紀久
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2013 年 29 巻 2 号 p. 51-57

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抄録

2011年3月12日に東京電力福島第一原子力発電所において水素爆発が発生した。爆発以降、水戸市内に所在する測定点の大気中で測定された放射線量(空間放射線量とも呼ばれる)が急上昇しており、放射線による生活への影響が心配されている。本研究では、大気中放射線量の変動を予測するモデルを構築し、水戸市における今後の放射線量の動きを示した。本モデルは、原発事故由来の放射性物質からの線量の半減期に依存した指数関数的な減少を数式化し、環境蓄積している放射性物質の風雨等による自然除染線量による補正を行った。このモデルを用いて、2011年6月~2012年3月の大気中放射線量の実測値を回帰分析し、2012年4月から2014年3月までの大気中放射線量の予測を行った。予測では、水戸市の放射線量は原発事故2年後の2013年3月には事故以前の自然放射線量の最大値(0.056 μSv/hr)より若干高い値(0.065 μSv/hr)を示したが、事故3年後の2014年3月には自然放射線量の水準まで低下した。毎時・毎日の大気中放射線量を積算した大気中累積放射線量の予測値は、原発事故1年目、2年目ともに1 mSv/年を下回った。一方、頻繁に見られた大気中放射線量が突如上昇する現象は、短時間の「強い降水」と「強風」によって引き起こされることが重回帰分析によって示された。

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© 2013 システム農学会
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