システム農学
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研究論文
ラオス南部におけるタウンヤ式小規模チーク林業に関する課題の整理
淺野 悟史水野 啓小林 愼太郎
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2014 年 30 巻 1 号 p. 1-8

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抄録
本研究は、貧困削減と森林回復を目指しラオス南部に導入された、チーク林業の拡大に伴う課題を整理する目的で行われた。筆者らは2009年以降、ラオス南部チャンパサーク県内の対象村で調査を行い、(1)農村住民の世帯所得、(2)土地利用および林産資源利用という視点から、タウンヤ式チーク林業拡大の課題を整理した。その結果、(1)主幹となる現金獲得手段として期待され導入されたにも関わらず、ほとんどのチーク林所有者が小額の収入を目的とした択伐に基づく販売を行っており、世帯所得に与える効果は非常に小さいことが明らかになった。これは対象地域の住民が複合型生業に依存していることを示唆している。(2)2009年以降のチーク林分布図では土地利用規制上、農林業が禁止されている保護林に侵入したチーク林の存在や、村の土地として割り当てられた場所以外へのチーク林の拡大が確認された。また、自然林への負荷を減じることが期待されていたチーク林所有者でも林産資源への依存度が変わらないことが示された。このような課題の解決のために、所得向上を達成しながらも自然林減少と質の低下を防ぐため、地域資源の連関性に着目した新たな複合型生業を確立させる支援施策が望まれる。
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© 2014 システム農学会
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