システム農学
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研究論文
砂丘草原におけるデジタルカメラ画像解析による植生調査手法開発の試み
上 佳孝小山 里奈
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2014 年 30 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

現在多く用いられている目視によって被度を記録する植生調査には、調査結果が再現不能であることや客観的でないことなどの欠点がある。本研究では、フィールドで撮影された地上写真を用いて再現可能、定量的に調査できる植被率や被度の調査手法の開発を試みた。2012年8月に鳥取砂丘において、対象植物種の葉群及び裸地のRGBバンド画像及び近赤外線(NIR)バンド画像を取得してサンプルデータとした。取得したサンプルデータを教師データとテストデータに均等に分割した。教師データに対して、テクスチャ解析を適用し、テクスチャ特徴量を変数として植被や種の判別を行うモデルを作成した。モデルに利用する変数の選択に際しては、相関の高い変数群を取り除いた後、多項ロジスティック回帰を用いて植生の分類に有効な変数群を明らかにした。選択した変数群を用いて線形判別分析によりモデルを作成した。テストデータに対してモデルを適用し、モデルの精度を植被と裸地の判別、分類群(綱)の判別、種の判別について検討した。また、RGBバンドを組み合わせたモデルとNIRバンド単独のモデルの精度の比較を行った。植被と裸地の判別においては、RGBモデルとNIRモデルがそれぞれ96%、87%と高い正解率を示した。NIRモデルにおいては、裸地の再現率が50%以下と低かったがRGBモデルでは全ての項目の再現率が80%以上と高かった。分類群(綱)の判別においては、RGBモデルとNIRモデルの正解率はそれぞれ86%、74%と高かった。NIRモデルでは、単子葉類の再現率が30%以下と低かったのに対して、RGBモデルでは全ての項目が70%以上と高い値であった。種の判別においては、RGBモデルの正解率が55%、NIRモデルが39%と両モデルとも低い値を示した。種によって再現率に0%~95%と大きな差があり、誤判別された種の多くは同じ分類群(綱)に判別された。これらの結果から、本研究で開発された手法を用いた地上写真を対象とした分類群(綱)の判別と植被率推定の可能性が示されたが、種の判別を行う必要がある被度推定の実用化にはまだ改良が必要であることが示唆された。

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