システム農学
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研究論文
褐毛和種周年放牧肥育生産に関するLCA による環境影響および経済性の評価
瀬戸口 暁大石 風人堺 久弥北浦 日出世熊谷 元家入 誠二広岡 博之
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2016 年 32 巻 2 号 p. 57-69

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抄録

褐毛和種の周年放牧肥育生産システムに関するライフサイクルアセスメント(LCA)による環境影響および経済性の評価を実施した。試験区としては、放牧区(G区)、飼料用米給与放牧区(GR-1区、GR-2区)および慣行の生産を想定した舎飼区(H区)が設定された。放牧3区(G区、GR-1区、GR-2区)においては、補助飼料として配合飼料と冬季に乾草が与えられた。飼料生産、飼料輸送、飼養管理、ふん尿処理および家畜からの環境負荷物質排出量を算出し、エネルギー消費、地球温暖化、酸性化、および富栄養化への環境影響を評価した。機能単位は平均日増体量1 kg とした。富栄養化においては、化学肥料や堆肥からの硝酸およびリンの流出を考慮に入れた。加えて、放牧地の炭素隔離が及ぼす影響を検討した。結果として、地球温暖化、酸性化および富栄養化への影響においてG区がH区に対して有意に大きい結果となった(P<0.05)。放牧地による炭素隔離を考慮した場合、放牧肥育生産システムからの地球温暖化に対する実質的な環境影響を大きく減少できる可能性が示唆された。経済性に関して、年間枝肉売上価格はG区がH区と比べ有意に減少し(P<0.05)、年間生産費は生産システム間に有意差は見られなかった。

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