システム農学
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技術論文
小型UAVの自律走行による果実のカウント
板倉 健太野秋 収平細井 文樹
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2022 年 38 巻 2 号 p. 29-35

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抄録

農地の高頻度なモニタリングは多大な労力がかかるため、画像や環境センサーを利用し、農地のセンシングが行われてきた。画像を用いた方法では、ロボットや、衛星、無人航空機(UAV)などが挙げられる。特に小型UAV(ドローン)に関しては、取り付けられるカメラや機体の性能向上などから、近年さかんに研究されている。UAV空撮においては、UAVのGPSの情報をもとにUAVを自動走行させ、対象エリアの画像を自動取得させる方法が有効である。一方、それらのUAVのセンサー情報(カメラなど)からUAVを自動的に制御し、その情報の自動解析により、UAVを航行させること(自律飛行)やGPSの届きにくい場所やハウス内での航行、さらに数十センチ単位の細かな制御は難しい。近年では、トイ・ドローンとよばれる、小型のUAVの性能も向上しており、安定したホバリングや高解像度の画像撮影も可能になりつつある。UAVを自律飛行させ、かつGPSの情報を用いず農地の画像取得ができれば、UAVによる農地モニタリングがより多くの場所で可能となる。本研究では、自律飛行する小型UAVによる農地モニタリングの基礎検討として、UAVに対象のエリアの画像撮影をさせ、対象の樹木に存在する果実のカウントを行った。果実の検出には、深層学習の手法と画像処理の手法を比較した。その結果、どちらの手法でも柑橘類は検出可能であるが、画像処理手法の方がより正確にカウントできることがわかった。画像処理技術を用いた提案手法では、139個の果実のうち、合計151個が検出され、過検出の傾向があった。F1値は0.9以上であった。しかし、YOLOv3のような深層学習の手法では、一部の果実を検出できず、果実数が過小評価されることがあった。YOLOv3は全139個の果実のうち95個のみの検出にとどまり、過小検出の傾向があった。

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