システム農学
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技術論文
ラージ・エディ・シミュレーションに基づく大崎耕土の居久根による農村住居周辺空間の風速低減効果の検討
南 健斗米澤 千夏大風 翼
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2022 年 38 巻 2 号 p. 37-42

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抄録

屋敷林は防風や日射遮蔽など屋外空間の環境制御や、木材の建材利用や落ち葉の燃料利用などの生活資材の確保等々、住居と人間の生活のなかで多様な関係性を持ちながら維持されてきた樹木群である。本研究では、宮城県大崎市に位置する大崎耕土の農村住居を対象に、伝統的な屋敷林である「居久根(いぐね)」の防風効果の定量化を通した価値の評価を目的として、CFD (Computational Fluid Dynamics) に基づく流体解析により検討を行ったので、その結果を報告する。建物及び居久根の形状は、ドローンを用いた空撮画像を基に作成した数値表層モデルを参考に再現した。居久根は高さ10 m程度で卓越風向側に位置しており、居久根の流体力学的影響は、植生キャノピーモデルを用いて再現した。風速場はLarge-eddy simulationにより風速変動も考慮した。歩行者高さの風速に着目すると、居久根による弱風域は樹木高さの10倍程度風下まで広がっており、敷地内の平均風速が1/4程度に減少した。また、中庭で極稀に発生する強風も1/4程度に低減し、風速の変動が抑えられた風環境が形成される事が分かった。

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