システム農学
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38 巻, 2 号
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技術論文
  • 板倉 健太, 野秋 収平, 細井 文樹
    2022 年 38 巻 2 号 p. 29-35
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/05/18
    ジャーナル フリー

    農地の高頻度なモニタリングは多大な労力がかかるため、画像や環境センサーを利用し、農地のセンシングが行われてきた。画像を用いた方法では、ロボットや、衛星、無人航空機(UAV)などが挙げられる。特に小型UAV(ドローン)に関しては、取り付けられるカメラや機体の性能向上などから、近年さかんに研究されている。UAV空撮においては、UAVのGPSの情報をもとにUAVを自動走行させ、対象エリアの画像を自動取得させる方法が有効である。一方、それらのUAVのセンサー情報(カメラなど)からUAVを自動的に制御し、その情報の自動解析により、UAVを航行させること(自律飛行)やGPSの届きにくい場所やハウス内での航行、さらに数十センチ単位の細かな制御は難しい。近年では、トイ・ドローンとよばれる、小型のUAVの性能も向上しており、安定したホバリングや高解像度の画像撮影も可能になりつつある。UAVを自律飛行させ、かつGPSの情報を用いず農地の画像取得ができれば、UAVによる農地モニタリングがより多くの場所で可能となる。本研究では、自律飛行する小型UAVによる農地モニタリングの基礎検討として、UAVに対象のエリアの画像撮影をさせ、対象の樹木に存在する果実のカウントを行った。果実の検出には、深層学習の手法と画像処理の手法を比較した。その結果、どちらの手法でも柑橘類は検出可能であるが、画像処理手法の方がより正確にカウントできることがわかった。画像処理技術を用いた提案手法では、139個の果実のうち、合計151個が検出され、過検出の傾向があった。F1値は0.9以上であった。しかし、YOLOv3のような深層学習の手法では、一部の果実を検出できず、果実数が過小評価されることがあった。YOLOv3は全139個の果実のうち95個のみの検出にとどまり、過小検出の傾向があった。

  • 南 健斗, 米澤 千夏, 大風 翼
    2022 年 38 巻 2 号 p. 37-42
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/05/18
    ジャーナル フリー

    屋敷林は防風や日射遮蔽など屋外空間の環境制御や、木材の建材利用や落ち葉の燃料利用などの生活資材の確保等々、住居と人間の生活のなかで多様な関係性を持ちながら維持されてきた樹木群である。本研究では、宮城県大崎市に位置する大崎耕土の農村住居を対象に、伝統的な屋敷林である「居久根(いぐね)」の防風効果の定量化を通した価値の評価を目的として、CFD (Computational Fluid Dynamics) に基づく流体解析により検討を行ったので、その結果を報告する。建物及び居久根の形状は、ドローンを用いた空撮画像を基に作成した数値表層モデルを参考に再現した。居久根は高さ10 m程度で卓越風向側に位置しており、居久根の流体力学的影響は、植生キャノピーモデルを用いて再現した。風速場はLarge-eddy simulationにより風速変動も考慮した。歩行者高さの風速に着目すると、居久根による弱風域は樹木高さの10倍程度風下まで広がっており、敷地内の平均風速が1/4程度に減少した。また、中庭で極稀に発生する強風も1/4程度に低減し、風速の変動が抑えられた風環境が形成される事が分かった。

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