2003 年 15 巻 4 号 p. 271-275
【目的】肺癌に対する放射線治療において, 不均質部補正アルゴリズムの適用の有無が照射線量に及ぼす影響をファントム実験と臨床症例を用いて検討した.
【対象と方法】本研究では, Cadplan Helios ver. 6.01に搭載されたBatho法とequivalenttissue-air-ratio (ETAR) 法の2つの不均質部補正アルゴリズムを用いた, ファントム実験は6MVと10MVのエネルギーを使用し, 5cmおよび10cmのコルク層をWater density materialの層で挟み作成した肺ファントムを用いて施行した. 臨床症例の検討は, 肺癌の放射線治療に用いた50照射ビームに関して, 不均質部線量アルゴリズムを使用する場合としない場合のMonitor Unit (MU) の値を比較検討した.
【結果】ファントム実験においては, 不均質部補正を用いない場合, 実測線量は計算線量に対し6.7~21.8%の過線量の照射となった. 臨床症例の検討では, Batho法とETAR法を用いた場合のMU値は, 不均質部補正アルゴリズムを用いない場合の照射線量と比較した場合, それぞれ平均値で4.2%, 5.6%低い値を示した.
【結論】不均質部補正アルゴリズムを使用することは, 肺癌の照射線量計算において有効である. 放射線腫瘍医は, 不均質部補正アルゴリズムを適用する場合, 適用しない場合と比較して数%の低線量の照射になる可能性があることに注意する必要がある.