2003 年 15 巻 4 号 p. 277-283
筑波大学陽子線医学利用研究センターでは, 本格的な治療臨床試験を押し進めるために二基の回転ガントリーと二つの研究用水平ラインを持つ病院付設型の陽子線治療施設が建設され, 2001年9月から治療機の安全性を確認するための臨床試験が開始された. 陽子線治療以外では治療が困難と考えられる6症例 (卵巣癌の肝転移, 肺癌2例, 胆管細胞癌, 直腸癌の骨盤内再発, 乳癌の後頭蓋窩転移) を対象とし, これまで筑波大学旧陽子線医学利用研究センターで行ってきた方法に準じて治療し, 治療装置の安全性, 治療関連の有害反応について評価した. 全経過を通じて治療装置の不具合からくる問題はなく, グレード2以上の有害反応は皮膚反応のみであった. この結果から, この陽子線治療装置は安全で, 治療の続行に問題はないことが示された.