抄録
放射線療法を施行し, 1980年から1994年までの15年間に, 剖検の行われた食道癌症例40例を対象として, 局所制御, リンパ節転移, 遠隔転移について検討した. 剖検率は, 放射線療法を施行した食道癌死亡症例の21%であった.
剖検例全体では25%(10/40例), 生存期間が3か月を越えた症例では34%(10/29例), 60Gy以上照射できた症例では33%(8/24例) の症例で, 局所制御が得られていた. 局所制御に影響する因子として, X線型, 腫瘍長径が有意であった. 生存期間も有意な因子であったが, 局所制御は長期生存のための必要条件であるためと考えられた.
剖検時に痩孔を形成していた症例は18例 (45%) で, 気管, 気管支, 肺の呼吸器系への穿孔が12例, 大動脈, 頸動脈の血管系への穿孔が4例, 縦隔, 胸腔への穿孔が2例であった.
リンパ節転移は32例 (80%), 遠隔転移は27例 (68%) に認められた. リンパ節転移は, n3: 7例, n4: 23例で, 3, 4群リンパ節への転移が高頻度に認められた. 遠隔転移は, 肺20例 (50%), 肝19例 (48%), 胃10例 (25%), 膵・副腎8例 (20%), 胸膜7例 (18%), 骨・心・横隔膜6例 (15%) の順に多かった.
異時性の重複癌が4例 (胃癌2, 顎下腺癌1, 食道癌1), 同時性重複癌が6例 (胃癌2, 肝癌2, 肺癌1, 甲状腺癌1) あった. 肝癌, 甲状腺癌は, 剖検時偶然発見された潜伏癌であった.
今回は, 剖検例という特殊な症例を対象にした検討であるが, 60Gy以上の照射例では, 1/3の症例で局所制御が得られていた. 局所制御に影響する因子として, X線型, 腫瘍長径が有意であった.