抄録
目的本研究の目的は外部照射とバルーン法による高線量率イリジウム腔内照射ブーストで治療した食道表在癌症例の, 患者および治療パラメータを局所再発と粘膜潰瘍発症について解析し, 有効かつ安全な腔内照射プロトコールを確立することである.
対象と方法1992年5月から1994年11月までに広島大学および広島市民病院において放射線治療を行った食道表在癌26例を対象とした.放射線治療は外部照射 (50~612Gy) を先行させた後, 高線量率イリジウム腔内照射ブースト (8~15Gy) を追加した.
結果26例中4例に局所再発, 7例に食道粘膜潰瘍を認めた.単変量解析では粘膜総線量は77Gy未満 (p=0.014), 腔内照射の分割回数は4回以上 (p=0.027), 腔内照射の粘膜総線量は17Gy未満 (p=0.036) が食道粘膜潰瘍発生に有意に低い因子であった.局所再発に関する有意な因子は認められなかった.
結論外部照射の必要な食道表在癌に対して高線量率イリジウム腔内照射プーストを施行する場合は, 粘膜面の線量を評価し, 粘膜面の許容総線量77Gy, 腔内照射における粘膜面の許容線量17Gy, 粘膜下5mmの基準面1回線量を現行の5~6Gyから2~2.5Gyに減量し, 分割回数を2~3回から4~5回に増加させれば, 局所制御率を低下させることなく粘膜潰瘍の発症が予防できると考えられた.