抄録
起業機会に直面した潜在的企業家はいかなる意思決定プロセスを経て起業の意思決定に至るだろうか。私はこの問題を、企業家各自の性格や事業機会をみとめる企業家の意思決定に認知バイアスがどのように影響しているかという観点で検討した。まずビジネス志向のある学生を対象にサーベイを実施し、因子分析とクローンバッハで質問票自体の信頼性を精査して確認した。そして企業家の性格や事実認知をゆがめるバイアスと起業の意思決定やリスク認知と関係をみとめるかについて回帰分析を行った。分析の結果、リスク認知の低さが意思決定を促しているが、認知バイアスとしての自信過剰、コントロール幻想、少数の法則信奉はリスク認知には影響していなかった。さらに楽観性や柔軟性は起業の意思決定に影響がなかったが、リスク性向と意思決定には関係が認められた。これはアメリカで確認されている先行研究とは異なる結果で、日本独自の問題だと指摘しうる。