抄録
本稿の目的は、ベンチャー企業が関与する産学連携プロジェクトにおいて、ベンチャー企業をはじめとする個々の組織が制度的複雑性に対処するプロセスについて明らかにすることにある。ベンチャー企業はその性質上、資源動員のために制度的複雑性に対処せざるを得ず、制度的複雑性への対処は重要な課題となる。しかし、制度的複雑性への対処に関する先行研究では、単一の組織ではなく複数の組織が協働する、組織間連携における対処についての考察が不十分である。本稿では、産学連携プロジェクトを題材として、ベンチャー企業が制度的複雑性に対処し、資源を獲得するプロセスについて分析した。事例研究の結論として、個々の行為主体が協働のためのスキームを創造する「同床異夢」状態の構築そのものが、制度的複雑性の生成を規定し、かつ対処となっていることを主張した。