抄録
近年、コーポレート・アントレプレナーシップ研究では、従業員の個人的企業家志向性(IEO)とその決定要因の議論が始まっている。そこでは「従業員の自己IEOの評価」が測定され、被説明変数として、分析されることが多い。しかし、組織におけるヒトの思考・意思決定や行動を考えると、「自己がどれくらいIEOを有しているか」という自己IEOの評価だけを測定することは妥当なのだろうか。本研究では社会比較理論を鑑み、自己と他者IEO の評価の差という変数を提示する。その上で、日本企業A社の営業系社員へのWEBアンケートと人事考課の評価点数などの人事データを接続した実証分析から、自己IEOの評価とIEO評価の差の二つの決定要因を比較した。そして、①職務自律性が高まると、自己IEOの評価が高まる、②職務多様性が高まると、IEO評価の差は大きくなる、③過去の人事考課の評価点数が高く、認知できれば、自己IEOの評価は高くIEO評価の差は大きくなる、と示した。加えて、「自己IEOの評価とIEO評価の差の決定要因は幾つかの点で異なる」ことなどを示唆した。