2023 年 18 巻 p. 1-12
新型コロナウイルス感染症の流行により腎移植後患者が抱いた思いと生活への影響を明らかにするため、腎移植後患者9名に半構造化面接を行い、質的記述的に分析した。思いは8個のカテゴリに分類され、そのうち【免疫抑制剤の内服継続に対する気持ちの揺らぎ】【移植後の自己管理行動が役立ち安心する】【これまでの通院経験が多いからこそ良い面も感じられる】ことは、腎移植後患者に特徴的な思いであったと考えられた。生活への影響は4個のカテゴリに分類され、中でも、【公私に渡り感染予防が優先され、人との関わり方や生活習慣が変化した】というカテゴリには、体重増加や体調の変化を示すサブカテゴリが含まれており、感染予防行動による移植腎の機能へのネガティブな影響が垣間見えた。コロナ等の新興感染症流行下では、腎移植後患者に特化した情報提供や、不安を抱きつつ服薬アドヒアランスを維持する患者への支援、低下した活動量に応じた生活指導、安心して受診できる受診体制の整備等の支援が必要であると考えられた。