現代監査
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不正リスク要因の考察
不正への対応を意識した監査の要点
甘粕 潔
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2010 年 2010 巻 20 号 p. 26-34

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抄録
日本公認会計士協会が財務諸表監査における不正への対応指針として示した監査基準委員会報告書第40号は,「不正リスク要因」すなわち「不正に関与しようとする動機やプレッシャーの存在を示す,又は不正を実行する機会を与える事象や状況」の識別を重視している。不正リスク要因は,米国の犯罪学者クレッシーによる横領の発生要因に関する仮説に基づく概念である。クレッシーの仮説は,横領は信頼に背く行為であり,不正リスク要因は個々人の主観的認知により生じるなど,監査人が不正への対応力を高めるうえで有効な示唆を与える。不正は意図的に隠ぺいされ,その発見は容易ではない。そのため,不正対策の要点は,的確なリスク評価に基づく未然防止にある。監査人は,不正リスク要因の理解に裏打ちされた想定力・察知力・質問力を高めるとともに,不正防止・発見への対応強化に向けて,他の関係者との連携をより積極的に図らなければならない。
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© 2010 日本監査研究学会
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