2012 年 2012 巻 22 号 p. 75-83
企業がゴーイング・コンサーン(以下「GC」という。)情報の開示を行うことは,その企業の監査人にとっては被監査企業の監査リスクが高まったことを意味する。監査人は,監査契約維持による将来のリスクの高まりを回避することを目的として,監査契約を解除する可能性がある。一方,被監査企業は,GC情報の開示をしなくても適正意見を出してくれる監査人を選別するために,監査契約を解除し新たな監査人を選任する,いわゆるオピニオン・ショッピングを行う可能性がある。すなわち,GC情報の開示は,監査リスクの上昇を通じて,あるいは被監査企業のオピニオン・ショッピングの動機を通じて監査人の交代に影響を及ぼしている可能性がある。本稿では,GC情報の開示と監査人の交代との関係,さらに監査法人の規模がその関係にどのような影響を与えているかについて実証的に分析を行う。