2013 年 2013 巻 23 号 p. 104-113
正当な権利に基づく受益の発生ならびに権利と責任の枠組みに基づくサービスを市民に提供することが,職業的専門家に求められている。他の職業的専門家には類を見ない公正な受益概念であるパブリック・インタレストの実現を強調する公認会計士の職業倫理では,権利および責任という市民社会の道徳に適うことが求められる。この見方に従うと,契約自由の原則における公正な同意形成に基礎を置く信任手続きの構造を公認会計士の職業倫理の論理に組み込むことになる。
この論理の上に「次善の解決法」として適用される制度は,職業倫理の安定的な適用を可能にする固有の利点をもつ。ただし監査判断上の解決すべき事項は,パブリック・インタレスト概念の要件に適合する実践を視野に入れた公認会計士の職業倫理を必要とする。近年のIFACにおけるパブリック・インタレスト概念の定義に代表される取り組みは,新たなコンヴェンションとしての職業倫理像を築く一歩となる。