本テーマを考えるに当たって,先ずⅠにおいて,監査の目的論と期待ギャップ論から説き起こし,Ⅱにおいては,過去の記憶に残る会計不正事件の歴史を辿りつつ,監査制度の変遷を振り返ってみた。
これらの検討を踏まえて,Ⅲで,不正と対峙するあるべき監査人の姿を次の三つの観点から考察する。
⑴監査意見表明の環境整備 ⑵監査事務所の取り組み ⑶監査事務所の専門職構成員の心構え
⑴では①東証上場廃止ルールの見直しの問題,②監査事務所の財務安定性の確保とJICPAの役割,そして③「不正対応基準」創設の問題を採りあげて私見を述べている。次に⑵では,監査人の不正対応に当たっては,何よりも「現場の再生・強化」が必要であることを説いた。最後に
⑶では,その「現場力の再生・強化」の第一歩は,現場の若い専門職スタッフの意識改革にあることを強調している。
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