現代監査
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2013 巻, 23 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  •  ─最近の会計不正事件を題材に考える─
    髙谷 晋介
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 17-26
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/19
    ジャーナル フリー

    本テーマを考えるに当たって,先ずⅠにおいて,監査の目的論と期待ギャップ論から説き起こし,Ⅱにおいては,過去の記憶に残る会計不正事件の歴史を辿りつつ,監査制度の変遷を振り返ってみた。

    これらの検討を踏まえて,Ⅲで,不正と対峙するあるべき監査人の姿を次の三つの観点から考察する。

    ⑴監査意見表明の環境整備 ⑵監査事務所の取り組み ⑶監査事務所の専門職構成員の心構え

    ⑴では①東証上場廃止ルールの見直しの問題,②監査事務所の財務安定性の確保とJICPAの役割,そして③「不正対応基準」創設の問題を採りあげて私見を述べている。次に⑵では,監査人の不正対応に当たっては,何よりも「現場の再生・強化」が必要であることを説いた。最後に

    ⑶では,その「現場力の再生・強化」の第一歩は,現場の若い専門職スタッフの意識改革にあることを強調している。

  • 弥永 真生
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 27-34
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー

    会社法は,会計監査人の身分的安定性を確保するための方策を講じ,反射的に,金融商品取引法上の監査人の独立性が担保されている。しかし,─とりわけ,不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合には─監査手続きの追加が必要となるが,経営者が監査報酬を決定することとされていると,監査手続きの追加に対応する報酬の増額は実現しにくいし,報酬の増額を求めることは隠ぺい工作の必要性を認識させることになる。また,監査報告書の提出期限の硬直性は,実効的な監査を妨げ,あるいは意見不表明を増加させるおそれがある。さらに,公認会計士の職務遂行に関連して十分なセーフ・ハーバーを設けないと,監査人間の引き継ぎなどが適切になされないことにつながりかねない。他方,新実務指針は監査人の任務を拡大するとともに,中小企業の計算書類の信頼性を高めるという観点からの準拠性の枠組みを前提とする監査の可能性を示唆しているようにも思われる。

  • 武田 和夫
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 35-42
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/21
    ジャーナル フリー

    わが国の「公認会計士法」の起源は,明治42年の日糖事件とその後の『公許会計士制度調査書』にみることができる。そこで,公認会計士法制定までの経緯と平成15年改正の内容を考察することにより,当時の職業会計士の業務内容を詳らかにし,公認会計士の使命がパブリックの概念を意識することにあり,その結果,経済主体のガバナンスの支援と内部統制のチェックを遂行することが業務の本質になることを解明した。

    その上で公認会計士による監査業務と内部監査の共通性を指摘し,公認会計士の内部監査への関与方法について,外部者と内部者の2つの立場から検討を加えている。前者としての立場からは,内部監査部門との共同実施の形態をとり,専門的知見に基づいた内部監査サービスを提供しなければならない。また後者の立場からは,パブリックの概念を保持することの重要性を指摘した。

  •  ─統合報告時代への提言─
    梨岡 英理子
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 43-49
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/22
    ジャーナル フリー

    世界では財務情報以外の環境CSR情報等を開示する動きが広がっている。日本においても,企業が自主的に発行するCSR報告書が増加し,非財務情報の開示が進んでいる。開示内容も具体化し,数値化で示される物量情報及びその金額評価,指数化など比較可能な情報が出現し,CSR経営を掲げる企業の経営指標のひとつとなっている。

    しかしながら制度外であるこれらの情報の信頼性確保の手段は確立されておらず,企業は自主的に第三者審査などを受けるなどの方法を開発し,情報の信頼性を確保している。

    企業の財務情報の信頼性を確保する公認会計士として,これらの非財務情報の信頼性確保に対して傍観せず,むしろ積極的に関与していきたいと考える。電力サーチャージの減免額の認定など,すでに企業財務と関わりの大きな分野で公認会計士の活躍が期待されている。この機会に「財務情報以外の監査」をテーマに公認会計士の役割について考えてみたい。

  • 池田 公司
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 50-57
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

    1990年代以降,欧米の研究者や監査法人は,伝統的な財務報告の投資意思決定に対する有用性に疑問を投げかける主張を行うようになっている。1994年に公表されたJenkins委員会報告書

    (AICPA[1994])で提唱されたビジネス・レポーティングという概念がこうした一連の議論に先鞭を付けたといえるであろう。AICPAは,その後ビジネス・レポーティングのための言語としてXBRL(eXtensible Business Reporting Language)を開発するとともに,ビジネス・レポーティングを一層強化したEBR(Enhanced Business Reporting)への取り組みを始めた。ニューヨーク大学のBaruch Lev教授もLev[2001]において無形資産会計の必要性を強調するとともに,2002年の議会証言(Lev[2002])で無形資産会計における会計基準と監査基準の「表裏一体性」を強調した。

    こうした現状の中で,監査の研究や実践を,金融商品取引法監査のような制度監査に限定するのではなく,資本市場やステークホルダーからの期待があれば,Lev教授が2002年の議会証言で指摘したように,無形資産情報のような非財務情報も監査の対象に含めるべきではないかという主張が現れ始めている。オランダのグローバル企業で米国と日本にも事業を展開しているAEGON社は,3年間の準備期間をかけて2012年に統合報告を公表し,同社の外部監査人であるErnst & Youngによる保証業務を自主的に導入している。このような先端的な事例が現れている以上,監査論の研究も資本市場やステークホルダーの新たなニーズに対処していく必要がある。

  • より健全なパブリック・ガバナンスの実現に向けて─
    遠藤 尚秀
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 58-66
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/24
    ジャーナル フリー

    昨今,民間企業における不適切な会計処理を巡って,社会の関心が高まるとともに,監査の基準の一部改正が議論されたが,あくまでも財務諸表監査の範疇に限定されている。

    他方,公監査とりわけ自治体における「地方公監査」については,地域住民の情報ニーズの拡大(説明責任の拡大)に伴い,英米のみならずわが国においても,準拠性監査・財務監査(財務諸表監査)・業績監査といった異なる機能の監査が重層的に発展してきた。わが国の地方公監査制度に関して,公認会計士は多大な貢献をしており,本稿ではまずその実態を明らかにする。次に,異なる機能を有する地方公監査が,パブリック・ガバナンスの諸課題やガバナンスの諸原則といかに関連しているかについての研究がわが国では進んでいないため,英国におけるパブリック・ガバナンスの理論と原則を元に整理し,1つの方向性を示す。最後に,厳しい地方財政に対応すべく,包括外部監査制度や行政監査制度が,「保証業務」の概念に整合した業績監査へと理論的に純化するための要件も明らかにしたい。

  • 榊 正壽
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 67-74
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー

    世界規模での経済環境の変革期において,日本企業の経営手法やグローバル戦略が激しく変化しており,それに相まって日本の職業会計人に求められる提供業務の多様化,新たなサービススタイルが求められている。

    日本の職業会計人組織や個々人は,会計・監査分野以外の能力要件として,グローバル対応力や多様なビジネススキルを身に付け,こういった潮流に対応していくことや,欧米ではすでに実務となっている新たなサービス提供スタイルとしてのオフショア化,シェアードサービス化などへも柔軟に取り組んでいくことが必要である。

    職業会計人がこのような能力要件を身につけるためには,高等教育機関による「資格取得前教育」の変革も検討していくべきである。

  • 猪熊 浩子
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 75-86
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/26
    ジャーナル フリー

    国境を超えた企業活動が活発になることに伴い,会計基準・監査基準も世界標準化が求められ,会計プロフェッショナルにかかる教育や資格要件も国際化していく傾向にある。一方で,会計・監査制度が周辺の制度と密接な関係にある以上,各国の地域性が容易に解消されるわけではない。

    グローバル化とは単に制度の標準化・共通化を意味するだけでなく,絶えず地域性との摩擦と調和の下,進展していく過程であると考えられる。監査についてみれば,当面は各国固有の制度に基づく監査業務が重要である状況には変わりないとしても,会計基準・監査基準の国際標準化が進むにつれ,諸基準の標準化に対応して世界で活躍できる会計プロフェッショナルを育成していかなくてはならない。

    会計・監査制度は企業の活動基盤を支える社会的インフラであり,企業の国際競争力を支えている。今後,会計プロフェッショナルについても共通化や資格の相互承認が進展することが予想され,その時に備え会計プロフェッショナルにかかる確固たる将来像の構築が求められる。

  • 及川 拓也
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 87-95
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/27
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,実証モデルで用いられる会計事務所の規模変数がわが国において機能しているかを検証することである。本稿では,中央青山監査法人の解散を半強制的な監査事務所のローテーションとみなし,大規模監査人のレピュテーションが低下した状況で半強制的な監査事務所の交代が行われた時でも,監査人の規模を示すBIG3変数が機能しているかを検証した。検証の結果,国際展開しているわが国のクライアント企業(金融・保険を除く東証1部上場企業)がわが国の大規模監査事務所(Big 3)の監査の質を高く評価し,Big 3との契約を志向している可能性が示唆された。また,このことから,監査人の規模と監査の質には関係があり,Big 3との契約を志向するわが国のクライアント企業にとって,会計職業における自由化の推進や競争原理の導入はネガティブな情報となることが含意された。

  • ─監査思考からのアプローチ─
    小西 一正
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 96-103
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    歴史を研究する人々が古代の資財帳に関心を持ち研究されているが,会計や監査の分野から古代の資財帳などに関心を持つ会計や監査の専門家がなかなか現れないのではないかと思ったことが本稿の契機である。何故,資財帳は当時の法令によって作成されたかについて述べる。奈良時代の律令制で統治した政府は,政府が援助している寺院の資産の厳正な管理のため資財帳を作成させたのである。すなわち僧や壇越などからの寺院が所有する資産の不正を防止することが,資財帳の作成目的であったのである。資財帳の記載内容は三つの節に分けられている。この三つの節とは,寺院の縁起の節,寺院の資産表示の節,資財帳の作成及び記録者とその検査(監査)の節に分けることができる。本稿では,現代監査の視点から,この資財帳の記録・作成者(寺院の三綱)と独立した機構(僧綱所)に所属する検査人に焦点を絞り検討している。

  • 島 信夫
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 104-113
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    正当な権利に基づく受益の発生ならびに権利と責任の枠組みに基づくサービスを市民に提供することが,職業的専門家に求められている。他の職業的専門家には類を見ない公正な受益概念であるパブリック・インタレストの実現を強調する公認会計士の職業倫理では,権利および責任という市民社会の道徳に適うことが求められる。この見方に従うと,契約自由の原則における公正な同意形成に基礎を置く信任手続きの構造を公認会計士の職業倫理の論理に組み込むことになる。

    この論理の上に「次善の解決法」として適用される制度は,職業倫理の安定的な適用を可能にする固有の利点をもつ。ただし監査判断上の解決すべき事項は,パブリック・インタレスト概念の要件に適合する実践を視野に入れた公認会計士の職業倫理を必要とする。近年のIFACにおけるパブリック・インタレスト概念の定義に代表される取り組みは,新たなコンヴェンションとしての職業倫理像を築く一歩となる。

  • ─「Sawyerの内部監査」を手がかりにして─
    島﨑主税
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 114-121
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー

    現在の内部監査アプローチはリスク・ベースとされるが,その実質は明確でない。稿者の問題意識の出発点はここにあるのであるが,これを明らかにすることはすなわち,このアプローチが主流になり始めた90年代後半に至るまでのアプローチの変遷を明らかにすることである。そこで「Sawyerの内部監査」を手がかりにしてこの点の解明を試みると,内部監査は比較的以前から,目的→リスク→コントロールなるアプローチを採用しており,しかも,これはCOSOフレームワークの思考と合致することから,現在においても維持されていることが分かる。その一方で,90

    年代半ば以降からERMが導入され始めたことを受け,これとの密接な関連性を確保する必要性が認識されるようになっていることもうかがい知ることができる。この点,90年代後半頃より主流となったリスク・ベースのアプローチの特質は,かかるERMとの関係性が意識されているということにある。

  • 浅野 信博
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 122-131
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/06/01
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,監査パートナーによる回転ドア(revolving door)の慣行がわが国にも存在するのかどうか,もし存在するのであればどのような態様で存在するのかについて明らかにすることである。監査パートナーは会計・監査にかんして高度な専門的知識を有するのみならず,クライアント企業の財務・業務内容に精通していることから,これを上級財務担当取締役等として受け入れることによって企業は取引コストの節減を図ることが可能となる。他方,このような回転ドアの慣行は監査人の独立性を毀損するのではないかという深刻な議論が存在する。本稿で実施した調査の結果,米国とは異なり,社内取締役・社内監査役レベルでは監査パートナーによる回転ドアに該当するケースはほとんど存在しない一方,非常勤社外監査役レベルでは監査パートナーによる回転ドアの慣行が相当数存在する可能性が高いことが明らかとなった。この事実は,わが国においても,クライアント企業による監査パートナーの人材受け入れをめぐって数多くの研究機会が存在することを示唆する。

  • 小澤 義昭
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 132-142
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/06/02
    ジャーナル フリー

    近年,欧米を中心に職業的懐疑心の在り方が改めて問われており,規制当局と監査事務所の間で議論が重ねられている。この職業的懐疑心に係る議論の内容を公表されている資料等に基づき,時系列的に規制当局の立場と監査事務所側のそれぞれの立場から,英国の議論を中心に整理を行った。そして,規制当局が何をもって監査事務所の職業的懐疑心の欠如を憂慮し,どのような改善を求めているのか,それに対して,監査事務所はどのように反論し,グローバルベースでどのように対処しようとしているのかについて考察を行った。更に,この目に見えない職業的懐疑心に対して,規制当局は具体的にどのような実務的対応を監査人,監査チーム及び監査事務所に求めているのかを見ていくことにより,規制当局が求めている「正しい職業的懐疑心の発揮」とは何かを 筆者の35年間の監査実務経験を踏まえて,明らかにしていった。そして,最後に我が国監査実務に与える影響について検討した。

  • ─被監査企業の財務報告数値の観点から─
    酒井 絢美
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 143-154
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/06/03
    ジャーナル フリー

    本稿では,監査人の保守性(auditor conservatism)という見地に基づいて監査人の交代を捉え,監査人の交代が監査人の保守性の表れる契機の1つとなる可能性を実証的に検証している。

    裁量的会計発生高を用いた実証分析の結果,監査人を交代した企業は交代していない企業に比べ,監査人交代後により保守的な財務報告数値を計上する傾向にあることを示す証拠が得られた。

    また,前任監査人を規模別に大手監査法人とその他の監査人とに分類すると,前任監査人がその他の監査人である交代企業はその他の企業に比べ,監査人交代後により保守的な財務報告数値を計上する傾向にあることを示す証拠も得られた。これらの結果は,監査人の保守性の一側面である財務報告数値の保守性が,監査人交代後に見受けられることを示唆しているとともに,後任監査人の保守性は前任監査人の規模による影響を受けている可能性があることを示していると考えられる。

  • 山口 友作
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 155-165
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/06/06
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,監査事務所の規模がアナリスト予想の正確性に及ぼす影響を実証的に明らかにすることである。多くの先行研究では,監査事務所の規模が監査の質に影響を及ぼすことが理論的にも実証的にも示されてきた。監査事務所の決定は,総資産といった企業の特性が深く関連していると考えられる。その場合,監査事務所の規模は単に総資産といった企業の特性を反映しており,監査事務所の監査の質を反映していない可能性がある。そのため,本稿では,傾向スコアマッチングを用いて,大規模監査事務所のクライアントとその他の監査事務所のクライアントの特性をできるだけ近づける処置を行い,分析を行う。分析の結果,傾向スコアマッチングを用いていないフルサンプルの分析では,監査事務所の規模とアナリスト予想の正確性に有意な関係が認められたが,傾向スコアマッチングを用いてサンプル抽出を行って分析した結果,有意な関係が認められなかった。

  • 小松 義明
    2013 年 2013 巻 23 号 p. 167-183
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2017/06/07
    ジャーナル フリー
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