2013 年 2013 巻 23 号 p. 122-131
本稿の目的は,監査パートナーによる回転ドア(revolving door)の慣行がわが国にも存在するのかどうか,もし存在するのであればどのような態様で存在するのかについて明らかにすることである。監査パートナーは会計・監査にかんして高度な専門的知識を有するのみならず,クライアント企業の財務・業務内容に精通していることから,これを上級財務担当取締役等として受け入れることによって企業は取引コストの節減を図ることが可能となる。他方,このような回転ドアの慣行は監査人の独立性を毀損するのではないかという深刻な議論が存在する。本稿で実施した調査の結果,米国とは異なり,社内取締役・社内監査役レベルでは監査パートナーによる回転ドアに該当するケースはほとんど存在しない一方,非常勤社外監査役レベルでは監査パートナーによる回転ドアの慣行が相当数存在する可能性が高いことが明らかとなった。この事実は,わが国においても,クライアント企業による監査パートナーの人材受け入れをめぐって数多くの研究機会が存在することを示唆する。