2014 年 2014 巻 24 号 p. 126-136
21世紀監査厳格化の顕著な傾向は,上場企業トップの利益マネジメント傾向と,被監査企業と会計プロフェッションとの癒着傾向に対する,市場監督者のカウンター・バランス政策の結果である。会計プロフェッションのスタンスは,実のところ経済的インセンティブの捻れにより脆くされる。それが故に監査品質とプロフェッションの独立性が脅かされているという危機感が,市場監督者の意識に内在してきた。
本稿では米国における監査厳格化プロセスの一断面を見通す。その目的で米国ニュー・エコノミー勃興期とされる1990年代を軸に,市場監督者,経営陣と会計プロフェッションのマインドセットの相克状況を考察した。そして会計プロフェッションの自主規制に終焉を迎えさせた往時のSEC委員長アーサー・レビットの言説を手掛かりに,市場監督者とプロフェッションの対峙,会計の政治化プロセスとパワーゲーム,さらには自主規制に対する創造的破壊のプロセスを回顧する。