現代監査
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監査役と監査人との連携,監査人または業務執行社員の 交替における引継ぎの品質管理について
柴原 啓司
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2014 年 2014 巻 24 号 p. 60-71

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抄録

 「監査基準の改訂について」(平成25年3月26日企業会計審議会)において,「監査役等との連携」が追加された。これは,「今般の不正リスク対応基準の検討において,不正リスクの内容や程度に応じ,適切に監査役等と協議する等,監査役等との連携を図らなければならない」とされたことによる改訂である。従来の監査基準においては監査役等との連携に関する規定がなかったが,監査における監査役等との連携は,不正が疑われる場合に限らず重要であると考えられることから,監査人は,監査の各段階において,適切に監査役等と協議する等,監査役等との連携を図らなければならないことが明記された。

 監査基準の改訂に際し,企業会計審議会監査部会長を務められた脇田良一先生は,「現行の監査基準の体系は,旧大蔵省,金融庁,日本公認会計士協会,監査実務の担い手により,苦心惨憺・試行錯誤の結果として築き上げられたものである」と述べられたうえで,「思うに,現行の監査基準(企業会計審議会)の規定するところに,新たに加えることは無い」と述べられている(脇田[2012]109頁)。今回の監査基準の改訂に盛り込まれた内容が,結果として「審査」に関する事項と「監査役等との連携」の2つであることを考えれば,監査役等と監査人との連携に関して重要な意義をもつ改訂であると考えられる。そこで,監査役等と監査人との連携についてのこれまでの経緯を振り返りつつ,不正リスク対応基準の設定による影響について考察する。

また,不正リスク対応基準に新たに規定された,監査人または業務執行社員の交替における引継ぎの品質管理についても考察する。

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© 2014 日本監査研究学会
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