さまざまな情報に対して監査・保証業務の拡がりが生じている。その拡張の一例として,本稿では,企業内容開示制度において有価証券報告書の要記載事項となっている「事業等のリスク」情報を取りあげ,その信頼性付与に対する実行可能性を論じる。
財務諸表監査においては,事業上のリスクを重視したアプローチが採られ,企業をとりまくさまざまなリスクを監査業務の実施において重視することが求められている。しかし,監査業務では,経営者が行った「事業等のリスク」情報の評価や開示は意見表明の対象ではない。したがって,現行制度では,その信頼性を確保する手段は存在しない。現状では「事業等のリスク」情報は,総論的な内容が散見され,有用な情報価値を有しているとは言い難い。企業リスク情報の信頼性を確保するためには,どのような仕組みが実行可能かつ有用であるか,その際の課題や望ましい方向性を探りたい。