現代監査
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2016 巻, 26 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 宮本 京子
    2016 年2016 巻26 号 p. 12-23
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

    さまざまな情報に対して監査・保証業務の拡がりが生じている。その拡張の一例として,本稿では,企業内容開示制度において有価証券報告書の要記載事項となっている「事業等のリスク」情報を取りあげ,その信頼性付与に対する実行可能性を論じる。

    財務諸表監査においては,事業上のリスクを重視したアプローチが採られ,企業をとりまくさまざまなリスクを監査業務の実施において重視することが求められている。しかし,監査業務では,経営者が行った「事業等のリスク」情報の評価や開示は意見表明の対象ではない。したがって,現行制度では,その信頼性を確保する手段は存在しない。現状では「事業等のリスク」情報は,総論的な内容が散見され,有用な情報価値を有しているとは言い難い。企業リスク情報の信頼性を確保するためには,どのような仕組みが実行可能かつ有用であるか,その際の課題や望ましい方向性を探りたい。

  • 〜準拠性に関する意見の導入がもたらす影響〜
    井上 善弘
    2016 年2016 巻26 号 p. 24-33
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

    平成26年の『監査基準』の改訂により,監査報告書における監査意見の表明形態として,従来の適正性に関する意見に加えて,新たに準拠性に関する意見が導入された。今般の『監査基準』の改訂に携わった関係者や会計プロフェッションは,適正性に関する意見と準拠性に関する意見の共通点をことさらに強調している。しかしながら,無限定意見が表明される場合を前提にすると,適正性に関する意見が表明される場合と準拠性に関する意見が表明される場合とでは,監査済財務諸表が利害関係者に対して持つ意味が異なる等,両意見の間には重要な相違点が存在する。

    財務諸表の監査に対する社会一般の信頼をこれまでどおり維持していくためには,準拠性に関する意見を導入するに当たって,監査意見の本質が変容することがあってはならない。準拠性に関する意見の導入が監査意見の本質にどのような影響をもたらすかについて注視しなければならない。

  • 異島 須賀子
    2016 年2016 巻26 号 p. 34-42
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー

    平成26(2014)年2月に「監査基準の改訂に関する意見書」が公表され,新たに監査意見として準拠性に関する意見を公表することができるようになった。これは監査目的の多様化に伴う監査業務のあり方が見直された結果,監査意見表明の枠組みとして適正性と準拠性があることが示されたものである。

    改訂監査基準の「監査の目的」は,財務諸表監査に際して適正性に関する意見の表明を原則とし,場合によっては準拠性に関する意見を表明することもあり得るという構造になっていると考えられる。

    本稿では,監査基準委員会報告書に示された適正性と準拠性の定義について,改訂監査基準の「監査の目的」の構造および「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書」にもとづいて検証した上で,適正性と準拠性の定義が日本の監査実務と整合しているか否か,整合していないとすれば,その原因は何かについて考察する。

  • 北山 久恵
    2016 年2016 巻26 号 p. 43-52
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    平成26年2月18日に,監査基準が改訂され,これまで公認会計士が監査業務を提供できていなかった,特定の利用者の財務情報に対するニーズを満たすように策定された特別目的の財務諸表や,財務諸表の一部を構成する個別の財務表又は財務諸表項目等に対して,一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠した監査業務の提供が可能となり,あわせて,従来の適正性に関する意見に加え,準拠性に関する意見も認められることなり,監査業務の可能性は大きく広がったといわれている。まず,準拠性に関する意見と適正性に関する意見の異同点について考察し,次に,日本公認会計士協会から公表された「監基報800」,「監基報805」,「監基報800及び805に係るQ&A」に挙げられている想定事例を紹介し,特別目的の監査,準拠性の監査の留意事項を整理する。特別目的の監査,準拠性の監査について再考することにより,公認会計士の監査実務における影響と課題について考察する。

  • 森田 佳宏
    2016 年2016 巻26 号 p. 53-64
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    アメリカにおいては,1975年に公表された監査基準書第9号によってダイレクト・アシスタンスが導入されたことにより,外部監査人による内部監査業務の利用形態は拡大した。しかしながら現行のAUセクション322すなわち監査基準書第65号は,現行の国際監査基準610とコンバージしたものではないため,外部監査人が内部監査人を利用する場合の要件が,少なくとも規定上は国際監査基準よりも簡素なままとなっている。連携を考える場合のポイントの1つは独立性の問題であり,もう1つは内部監査機能の品質確保の問題である。国際監査基準610には,監査人の独立性を担保するための規定がおかれている。一方,内部監査機能の品質に大きく影響するものとしては,IIA基準の遵守の問題がある。また,内部監査と外部監査の連携を促進していくためには,連携によって双方にもたらされる効果の検証も不可欠である。

  • 蟹江 章
    2016 年2016 巻26 号 p. 65-74
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー

    内部監査と外部監査は,最終的な目的を異にするために直接連携することは難しい。しかし,例えばフランスでは,それぞれの監査が固有の目的を見据えながら,監査委員会の機能を支援するという共通の目的を措定することにより,実質的かつ効果的な連携を実現することができる。

    フランスの内部監査人は,会計の専門的能力の向上に努めることで,会計業務監査を通じて会計不正の防止・発見に有効な情報を監査委員会に提供することができる。会計監査役は,企業のリスク管理システムや内部統制を理解して有効性を評価し,その結果を伝達することで監査委員会を支援すると同時に,内部監査に有用な情報を提供する。

    内部監査人,会計監査役,監査委員会の三者は,コーポレートガバナンスを通じて文字通りの連携を図ることができ,これによってそれぞれの監査の有効性が高まれば,企業経営の健全性の確保により一層貢献できるのである。

  • 山田 優子
    2016 年2016 巻26 号 p. 75-85
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    近年,上場会社において,不適切な会計処理の発覚により,過去数期分の有価証券報告書の訂正とともに訂正内部統制報告書を提出している事例が多く見受けられる。不適切な会計処理が発覚した場合には,経営者による内部統制の評価が適切であったかどうかが問題となり,また,監査人は当初の財務諸表監査および内部統制監査で表明した監査意見が適切であったかどうかが問題となる。内部統制報告制度の導入後における開示義務違反に係る告発・課徴金納付命令事案を対象として,処分対象期の内部統制の評価結果および監査人の対応について分析し,内部統制報告制度の問題点および今後の課題を提言している。本稿において明らかとなった実態は,経営者による内部統制の評価・監査人による内部統制監査の簡素化や,新規上場企業の内部統制監査の免除といった負担軽減の方向に一辺倒の制度設計に警鐘を鳴らしているように見える。

  • ─紛争鉱物報告書監査を題材として─
    岡野 泰樹
    2016 年2016 巻26 号 p. 86-96
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー

    LSEの研究者Michael Powerが,監査爆発の理論を提示してからおよそ20年が経過した。

    Powerは,当該理論の中で,テクノロジーとしての監査が,それを要求するプログラムと緩やかにしか結びついていないにも関わらず,多様な領域に普及しつつあることを明らかにしたのであった。Powerは,監査社会の特徴は,監査が統制システムに焦点を当てることにあり,多様な領域への監査の普及は,こうした統制システムへの注目という観点から説明可能であると主張する。

    本稿は,かかるPowerの主張を,2014年より米国で開始された紛争鉱物報告書監査を俎上に載せて検討するものである。検討の結果,紛争鉱物情報にたいする監査という,新たな領域への監査の普及は,Powerの指摘の通り,統制システムへの注目という観点から説明されうることが示される。また,紛争鉱物報告書監査の事例では,プログラムとテクノロジーとしての監査の結びつきの曖昧さが観察される。

  • 藤原 英賢
    2016 年2016 巻26 号 p. 97-108
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
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