2016 年 2016 巻 26 号 p. 24-33
平成26年の『監査基準』の改訂により,監査報告書における監査意見の表明形態として,従来の適正性に関する意見に加えて,新たに準拠性に関する意見が導入された。今般の『監査基準』の改訂に携わった関係者や会計プロフェッションは,適正性に関する意見と準拠性に関する意見の共通点をことさらに強調している。しかしながら,無限定意見が表明される場合を前提にすると,適正性に関する意見が表明される場合と準拠性に関する意見が表明される場合とでは,監査済財務諸表が利害関係者に対して持つ意味が異なる等,両意見の間には重要な相違点が存在する。
財務諸表の監査に対する社会一般の信頼をこれまでどおり維持していくためには,準拠性に関する意見を導入するに当たって,監査意見の本質が変容することがあってはならない。準拠性に関する意見の導入が監査意見の本質にどのような影響をもたらすかについて注視しなければならない。